ならしの動物医療センター

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report 症例報告

犬 腹腔鏡を用いた胃腹壁固定術①

2026.08.22

本日の症例は腹腔鏡を用いて胃腹壁固定術を行ったわんちゃんについてです。

 

胃腹壁固定術は大型犬に多く発生するといわれている胃拡張胃捻転症候群を防ぐことを目的としています。

 

まず胃拡張胃捻転症候群について説明します。

胃拡張胃捻転症候群とは、胃が食べ物や液体またはガスによって拡張することで胃がねじれてしまい様々な合併症を引き起こす救急疾患です。

スタンダード・プードルやラブラドール・レトリーバー、ゴールデン・レトリーバーなど胸の深い大型犬や超大型犬に多いといわれていますが、ダックスフンドやボストンテリア、コッカー・スパニエルなどの小型犬での報告もあります。

また胃拡張胃捻転症候群発症歴があるわんちゃんの子どもは発生しやすいといわれています。

発生原因は明確にはわかっていませんが、関連する可能性のあるものの1つに食事があげられます。

サイズが小さいドライフードや脂肪分または油脂が多く含まれるドッグフードを食べているわんちゃんは、胃から十二指腸への流れが遅くなることで胃拡張が起こりやすくなるといわれています。

他の原因としてストレスも発生の要因の一つと考えられており、ペットホテルの滞在時や車での移動などのストレスによって発生するという報告もあります。

症状として急にお腹が張ってきた、お腹を痛がる、吐きたそうだが吐けない、涎が出る、呼吸がしづらそうなどがあります。時間とともに病態は急速に悪化し、循環は低下して粘膜色は蒼白となり、虚脱し命に関わります。

胃拡張胃捻転症候群によって引き起こされる合併症はいくつかあります。

1つ目は循環不全です。胃の拡張と位置が変わることで静脈系の血管が圧迫され全身の血液の流れが悪くなります。それに伴う心拍数の増加や、全身の臓器に上手く血液が流れないことで全身性のショックが起こる可能性があります。

2つ目は呼吸不全です。拡張した胃が横隔膜を圧迫することで頻呼吸や浅速呼吸が増え呼吸がしにくくなります。また吐きたいのに吐けないことで食道に唾液が貯留し、口に逆流すると気道閉塞や誤嚥性肺炎を起こす可能性もあります。

3つ目は消化管不全です。循環血液量の低下や圧迫により胃壁の壊死や穿孔、また小腸の運動機能障害を引き起こす可能性があります。

4つ目は脾臓障害です。脾臓は胃の隣にいる臓器のため、胃がねじれるときに一緒に脾臓が巻き込まれてしまう可能性があります。そのため脾臓が大きく肥大しうっ血および虚血障害が認められることがあります。脾臓の大きな損傷や虚血を認めた場合は脾臓の摘出が必要になります。

胃拡張胃捻転症候群の診断は主に症状とレントゲン検査で行います。

これは胃拡張および胃捻転をおこしたわんちゃんのレントゲン写真です。

 

胃拡張胃捻転症候群は原因に気を付ければ発生を予防できるものではありません。そのため予防のための胃腹壁固定術の実施や疑う症状などが見られたらすぐに病院に連絡することが大切になります。

 

獣医師 團野