ならしの動物医療センター

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report 症例報告

犬の肝細胞癌

2026.09.27

犬の肝臓にできる腫瘍には、肝臓から発生した原発性の腫瘍と、他の臓器から転移した続発性の腫瘍があります。また、良性のものも悪性のものもあります。

肝細胞癌は、犬の肝臓で最も多く発生する原発性の悪性腫瘍です。

 

肝細胞癌は、肝臓の細胞が腫瘍化することで発生します。形態学的に塊状型、結節型、びまん型に分類され、塊状型が最も多くの割合を占めます。

 

肝細胞癌に特徴的な症状はありません。腫瘍が小さいうちは症状がなく、健康診断などで偶然発見されることもあります。

腫瘍が大きくなると、元気・食欲の低下、体重減少、下痢、嘔吐、お腹が張る、粘膜や白目が黄色くなる(黄疸)などの症状がみられることがありますが、これらの症状は肝細胞癌だけではなく、さまざまな病気でもみられます。

 

 

検査には血液検査、レントゲン検査、エコー検査、CT検査、細胞診、病理組織検査などがあります。

肝細胞癌では、血液検査で肝酵素の上昇がみられることがあります。特にALT、AST、ALPなどの上昇が報告されています。

しかし、肝酵素の上昇は他の病気でもみられる所見であるため、血液検査だけで肝細胞癌を診断することはできません。

 

また、肝臓に腫瘤がある場合、エコー検査やCT検査により、腫瘤の大きさや数、できている場所、近くの血管や胆管との位置関係、肝臓以外への転移が疑われる所見などを確認します。

その腫瘤が何なのかは、細胞診や病理組織検査で診断します。

 

肝細胞癌で重要な治療方法の一つが、外科手術による腫瘍の切除です。

特に、塊状型のように腫瘍が肝臓の一部に限局していて、切除が可能な場合には、手術によって長く生きられる可能性があります。

しかし、結節型やびまん型では外科的にすべてを取り除くことが難しい場合があります。

 

また、塊状型であっても、腫瘍の場所や大きさ、近くの血管との位置関係、わんちゃん本人の全身状態などによって、手術の難易度や予後は変わります。そのため、手術で完全に取り除くことが難しい場合もあります。完全に取りきれなかった場合には、追加で化学療法を行うこともあります。

 

 

ここで、当院で肝細胞癌の治療として手術を受けられたワンちゃんをご紹介します。

まず、血液検査での健康診断で肝酵素の上昇がみられました。症状はありませんでしたが、再検査で

 

も高い値であったためエコー検査をしたところ、肝臓に腫瘍のようなものが認められました。

このワンちゃんの腫瘍は体の大きさに対してかなり大きなものでした。また、腫瘍の近くには重要な血管があったため、手術を行うにあたっては血管の走行や位置関係を詳しく確認する必要がありました。

 

外科的に切除することをご希望されたため、CT検査により血管の走行や腫瘍との位置関係を確認したうえで、外科的に腫瘍を切除しました。腫瘍は大きく、近くに重要な血管もあったことから、完全に切除することは難しい状況でした。

 

その後、切除した腫瘍の病理組織検査から、肝細胞癌であると診断されました。現在は、残った腫瘍に対して化学療法を行い、経過をみています。

獣医師 楠