ならしの動物医療センター

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report 症例報告

棘細胞性エナメル上皮腫

2026.07.24

今回の症例は犬の歯肉に腫瘤ができていた症例です。

ワンちゃんの口の中にできる腫瘤には、炎症や歯周病によるものから、良性・悪性の腫瘍までさまざまな種類があります。その中のひとつに、棘細胞性エナメル上皮腫(きょくさいぼうせいエナメルじょうひしゅ)というものがあります。

〇棘細胞性エナメル上皮腫とは?

棘細胞性エナメル上皮腫は、犬の口腔内、特に歯肉に発生する腫瘍の一種です。

「良性腫瘍」に分類され、他の臓器へ転移することは基本的にありません。

しかし、「良性だから心配ない」というわけではありません。

この腫瘍は周囲の組織へ入り込む性質(局所浸潤性)が強く、歯の周囲や顎の骨を壊しながら大きくなることがあります。そのため、時間が経つと歯が動いたり、顎の骨が吸収されたり、食事がしづらくなったりすることがあります。

初期には、歯肉に小さな赤い・ピンク色の腫瘤として見つかることがあります。

腫瘤が大きくなると、

  • 歯肉が盛り上がっている
  • 歯の周囲にできものがある
  • 歯がぐらつく、位置が変わってきた
  • 口臭が強くなった
  • よだれが増えた
  • 食べ物をこぼす
  • 食べにくそうにする
  • 口や顔を触られるのを嫌がる
  • 顎の部分が腫れてきた

などの変化が見られることがあります。

ただし、口腔内の腫瘤は見た目だけで種類を判断することはできません。似たような見た目でも、別の腫瘍や炎症など、治療方法が異なる病気が含まれます。

まず口の中を詳しく診察し、必要に応じてX線検査やCT検査などを行います。

特に棘細胞性エナメル上皮腫では、腫瘤だけでなくその下にある顎の骨にどの程度影響しているかを確認することが重要です。

最終的な診断には、腫瘤の組織を採取して調べる病理組織検査が必要です。

口腔内の腫瘤は外見だけでは正確な診断が難しいため、病理検査が重要になります。

〇治療は「早期発見・早期治療」が重要です

棘細胞性エナメル上皮腫の治療では、腫瘍を周囲の正常な組織とともに十分に切除する外科手術が基本となります。

腫瘍が顎の骨まで入り込んでいる場合には、腫瘍だけを取り除くのではなく、腫瘍が入り込んでいる部分の顎の骨や歯を一緒に切除する必要がある場合があります。

一見すると大きな手術に感じられるかもしれませんが、犬では顎の一部を切除した後でも、状態に応じた食事やケアによって生活の質を維持できることがあります。

また、腫瘍の大きさや発生部位などによっては、放射線治療が選択肢となる場合もあります。

これは棘細胞性エナメル上皮腫について、飼い主様からよく疑問に思われるポイントです。

「良性腫瘍」と聞くと、放っておいても大丈夫だと思われるかもしれません。

しかし、この腫瘍は転移しにくい一方で、発生した場所の周囲へ強く浸潤するという特徴があります。

そのまま大きくなると、顎の骨や歯の周囲にまで病変が広がり、手術で取り除く範囲が大きくなる可能性があります。

そのため、できるだけ早い段階で診断し、腫瘍の広がりを確認したうえで適切な治療方針を検討することが大切です。

ご自宅のワンちゃんの歯肉に、

「以前はなかったできものがある」
「歯肉が一部分だけ盛り上がっている」
「歯が動いてきた」
「口臭やよだれが増えた」
「食べ方がおかしくなった」

といった変化がある場合は、できるだけ早めに動物病院を受診してください。

口腔内の腫瘤は、見た目だけでは良性・悪性を判断できません。

早期に検査を行うことで、腫瘤の種類や顎の骨への影響を把握し、その子に適した治療方法を検討することができます。

今回の症例の歯肉の写真です。

 病理検査を実施し、棘細胞性エナメル上皮腫と診断されました。

獣医師 田中