ならしの動物医療センター

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report 症例報告

消化管内寄生虫

2025.06.20

本日の症例は以前から軟便や下痢の症状を繰り返している仔犬です。

以前から間欠的に軟便や下痢の症状を呈し、下痢止めなどの対症療法を実施すると症状は改善しますが、同様の消化器症状を繰り返していました。

仔犬という事もあり、以前から糞便検査を実施しておりましたが、異常はありませんでした。

そして今回同様の消化器症状が出た為、再度糞便検査を実施したところ、異常がみつかりました。

こちらがその時の写真です。

画面の真ん中に虫がいるのが分かりますでしょうか?

こちらは糞線虫という虫です。糞線虫は、その成虫の体長が約2mmと小さく、肉眼ではほぼ確認することが難しい寄生虫です。おもに経口感染しますが、皮膚を穿孔して感染する経皮感染や粘膜を通じての感染もあり得るため、注意が必要です。

この糞線虫は多くの犬が共に生活している環境、ブリーダーなどでの集団飼育する環境で見つかることが多く、ペットショップで購入した犬の場合も注意が必要です。

寄生している場合の症状は、無症状で経過することもありますが、今回のワンちゃんのように軟便や下痢などの消化器症状も多く認められます。特に免疫力がていかしているような子犬では重症化しやすく、ひどい下痢や削痩、発育不良などがでることもあり非常に注意が必要です。

さらにこの糞線虫が大量に感染し、糞線虫の感染を見落とし無治療で放置されると、腸の中だけではなく肺組織を貫通して移行し、寄生虫性肺炎を生じ呼吸器症状を引き起こす場合もあります。

今回の症例のわんちゃんも1回の糞便検査では糞線虫がみつからず、3回目の糞便検査で見つかっております。

糞線虫以外の消化管内寄生虫も1回の糞便検査で検出されないこともありますので、繰り返す軟便や下痢の場合、糞便検査をご検討ください。

 

獣医師 田中