犬の誤食
以前にも誤食に関して症例報告したことがありますが、今回は金属を飲み込んでしまったワンちゃんがいたので、誤飲誤食についても説明しながら、報告いたします。
犬は本来、探索行動が活発であり、嗅覚や口を使って周囲の物を確認する習性があります。そのため、本来摂取すべきでない物質を誤って飲み込んでしまう「異物摂取」が日常的に発生し得ます。
誤飲・誤食の対象は多岐にわたり、チョコレートやキシリトール含有食品などの中毒性物質、プラスチック片や布類、玩具、ひも状異物、さらには薬剤などが含まれます。
今回は実際に金属製の異物(例:小型の金属片や留め具など)を誤飲した症例です。
今回の症例では、アレルギー症状を疑うような顔の腫れの症状を呈し、画像診断(レントゲン検査)により胃内の金属異物が確認されました。金属に対するアレルギーなのか金属の塗料に対するアレルギーなのかは不明ですが、まず催吐処置を行ったところ無事に異物がでてきてくれました。

金属異物は消化されることがなく、形状や大きさによっては消化管粘膜を損傷し、以下のような重篤な病態を引き起こす可能性があります:
・消化管閉塞(gastrointestinal obstruction)
・消化管穿孔(perforation)および腹膜炎(peritonitis)
・消化管出血
・重度炎症に伴う全身状態の悪化
また、鋭利な形状の金属や細長い異物は、腸管内で引っかかることで「腸管のひだ寄せ」を起こし、組織壊死へ進行するリスクもあります。加えて、一部の金属では金属中毒を引き起こす可能性も否定できません。
誤飲後に見られる主な症状としては、嘔吐、食欲不振、元気消失、腹痛、流涎(よだれ)、黒色便や血便などが挙げられます。ただし、初期には症状が軽微である場合も多く、発見が遅れる要因となります。
早期対応により、内視鏡的摘出や催吐処置など、より低侵襲な治療が選択可能となる場合があります。
予防の観点からは、以下の点が重要です:
・誤飲のリスクがある物品を犬の届く範囲に置かない
・玩具は適切なサイズと材質のものを選択する
・食べ物の管理を徹底し、人の食べ物を安易に与えない
・留守番時の環境整備(ケージ管理など)を行い、誤飲リスクのある物品を完全に排除する
・金属製品(クリップ、画鋲、アクセサリー、小物部品など)を犬の届く場所に置かない
・床や手の届く範囲に落ちている小物をこまめに確認・除去する
・誤飲しやすい性格や年齢(若齢犬など)を考慮した環境管理を行う
誤飲・誤食は、適切な環境管理により未然に防ぐことができる事故の一つです。大切なご家族である愛犬の健康を守るためにも、日頃からの予防意識を高く持っていただけますと幸いです。
獣医師 田中
