ならしの動物医療センター

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report 症例報告

猫の尿路結石症

2025.10.22

本日の症例は繰り返す尿路結石症により尿道に石が詰まってしまったねこちゃんについてです。

尿路結石症とは尿路のどこかに肉眼的に認められる石が存在することです。石がある場所によって腎結石、尿管結石、膀胱結石、尿道結石と呼び方が変わります。結石をつくる成分(尿結晶)の種類はたくさんありますが、最も発生が多いのはリン酸アンモニアマグネシウム(ストラバイト)、シュウ酸カルシウムです。2種類以上の成分を含む混合結石もあります。

尿路結石の発生は性別、品種、食事の種類、飲水量、尿路感染の有無、尿pHなど様々な要因があります。尿道閉塞はわんちゃんと比べてねこちゃんの発生が多く、オスのほうが多く発生します。
臨床症状は結石の大きさや数、存在部位によって異なりますが、血尿や排尿困難、頻尿が認められることが多いです。結石が尿道につまり尿道閉塞が起こると排尿ができなくなり、発見が遅れると腎不全による元気消失、食欲不振や嘔吐に繋がります。
診断は尿検査やレントゲン検査、エコー検査によって行います。尿検査では細菌の有無や尿pH、尿結晶の有無を調べることができます。レントゲン検査やエコー検査により結石が存在する場所や数を調べることが可能です。しかし結石の大きさや種類によってはレントゲン検査で検出ができない可能性があります。
治療方法は存在する尿結晶成分によって異なります。

ストラバイトは食事療法などの内科療法が主になります。結晶ができにくい環境をつくるためカルシウム含量が多い食餌を選択します。また飲水量の確保が大切になるため、ウェットフードやふやかしたドライフードにすることで食事中の含水量を増やすことができます。尿内に細菌が存在する場合抗生剤を使って治療します。しかし内科的治療による改善がみられない、結石による閉塞を繰り返す場合は外科手術が適応になります。
シュウ酸カルシウムは溶けにくいため外科手術による結石の除去が主になることが多いです。

本日の症例は下痢と嘔吐を主訴に来院されたオスのねこちゃんについてです。
血液検査を行ったところ腎数値およびカリウム、リンの上昇が認められたため尿検査とエコー検査を追加して実施しました。尿は赤色尿で尿検査において細菌や結晶は認められませんでしたが、エコー検査において膀胱結石および腎結石、尿管結石が認められ、左右共に尿管の拡張と腎盂の軽度拡張が認められました。そのため尿道閉塞による急性腎不全を疑い、カテーテルを用いて閉塞を解除し点滴入院となりました。カテーテルの設置により排尿ができるようになりましたが尿と共に結石が排出されなかったため、結石の除去と結石の溶解を目的に膀胱洗浄を実施しました。尿管結石が存在するため再閉塞するリスクはありましたが、排尿の問題はなかったため飼い主様の希望により尿道カテーテルを抜きました。しかし翌日にまた尿道閉塞が起こってしまったため膀胱切開による結石の摘出を行いました。摘出した結石を分析に出したところシュウ酸カルシウム結石であることが分かり、その後は内服薬と食事によって新しい尿石ができないようにケアをしていましたが、術後2週間ほどで再び尿道閉塞が起こり、閉塞を解除しても25日で再度閉塞が起こってしまうため、外科手術により尿道を別の場所につなげる会陰尿道造ろう術を実施することにしました。

術後の経過も問題なく現在まで閉塞せずに過ごすことができています。
何度もトイレに行く、数日尿が出ていなさそうなど排尿に関して普段と違うことがあれば早めにご来院ください。

獣医師 團野