犬 上顎の悪性黒色腫
本日の症例はお口の中に腫瘍ができたわんちゃんについてです。
悪性黒色腫はわんちゃんに多く発生する悪性度の高い腫瘍です。様々なところにできますが、口の中に一番多くできると言われています。転移する可能性が高いため早期発見が大切になります。見た目の特徴として黒色を呈していることが多いです。
診断には腫れている部分に針を刺して細胞を採材する細胞診検査がまず用いられます。細胞診検査では細胞が十分に採取できない事があるため、その場合確定診断には組織を切り取る病理組織検査が必要になります。
悪性黒色腫の治療は大きく分けて2つあります。
1つ目は外科手術や放射線による治療です。転移がなく、一部に限局して発生している場合とても有効な方法です。外科手術は1回の手術で腫瘍を取り除くことができます。口に発生している場合顎の骨を取ることになるため顔面の変化や食事のサポートが必要になることがありますが、今後のQOLの維持につながります。放射線による治療は何回も麻酔をかける必要がありますが、顔面の変化を伴ずに腫瘍を小さくすることが可能です。
2つ目は抗がん剤など薬による内科的治療です。現在できている腫瘍に対して著しい効果がないこともありますが、隠れた転移や小さな転移に効果的なこともあります。麻酔をかける必要がないため、転移している患者様にも治療を行うことができます。
今回の症例は1カ月ほど前から右頬の膨らみがあり、かかりつけの病院を受診したところ悪性黒色腫と診断されました。そのため治療や今後の相談のために本病院を紹介受診されました。
右頬および右眼の腫れが認められます。また上顎の腫瘍は黒色をしています。
術前検査のCT検査において肺への転移が認められました。口腔内の腫瘍は今後大きくなると腫瘍から出血したり、ご飯が食べれなくなったりとQOLが低下してしまうため、QOLの維持のために外科手術による口腔内の腫瘍の切除を行いました。
CT検査において腫瘍が上顎骨のみでなく、右眼まで浸潤していることが分かったため、外科手術による切除は右側尾側上顎骨および右眼球となりました。
手術後の写真です。
本症例は転移がすでにあり外科手術による根本的な治療にはならなかったため、手術後手術した部位の腫瘍の再発および他の場所への転移を抑えるために抗がん剤による治療を開始しました。現在術後1カ月経過しますが経過良好です。
今後も再発や転移に引き続き注意して治療していきます。
獣医師 團野