習志野動物医療センター りょう動物病院

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diagnosis 診療案内

お知らせ

外科アドバイザー

腫瘍外科専門医の廉澤剛先生を外科アドバイザーにお迎えしています。
今まで大学病院に執刀を依頼していた難易度の高い手術も、廉澤先生に執刀して頂くことにより当院で行える体制になりました。廉澤先生のご指導の下、腫瘍科・外科の充実をはかり、皆様のお役にたてる質の高い獣医医療に励んでいきたいと思っております。

廉澤 剛(かどさわ つよし)
廉澤 剛(かどさわ つよし)
  • 獣医師、日本小動物医療センター センター長

所属学会:日本獣医学会(評議員2002年4月-現在)、日本獣医麻酔外科学会(副会長2007年7月-2013年6月、会長2013年7月-現在)、動物臨床医学会(理事2015年11月-現在)、日本小動物獣医学会、日本獣医がん学会、VCS (VETERINARY CANCER SOCIETY)、VSSO(VETERINARY SOCIETY OF SURGICAL ONCOLOGY)

1984年
東京大学農学部畜産獣医学科卒業
1986年
東京大学大学院農学系研究科修士課程修了
1988年
東京大学農学部附属家畜病院 助手
1993年
東京大学大学院農学博士
1995年
北海道大学大学院獣医学研究科 講師
2004年
酪農学園大学獣医学部獣医学科 教授

腫瘍外科

猫の注射部位肉腫

この症例は、ネコの注射部位肉腫と呼ばれている腫瘍です。
ネコの注射部位肉腫は皮膚に発生する腫瘍であり、ネコの腫瘍の約10%を占めます。

はっきりとした原因は明らかではありませんが、注射部位の炎症が引き金となり発生すると考えられています。注射部位肉腫は悪性度の高い腫瘍であり、局所浸潤性が強く、病理組織学的に完全切除と診断された場合でも、再発する場合は少なくない。また遠隔転移も0~20%の症例で起こります。

治療としては、できるだけ広範囲の外科切除を行う。腫瘍の取り残しがある事もあるため、術後に根治的放射線治療や抗ガン剤治療を行うこともある。
この症例は、広範囲に外科的切除を行い、取り残しもなく切除できました。

現在、局所再発しないよう、抗ガン剤治療を行いながら、経過観察しております。

甲状腺癌

イヌにおいて甲状腺腫瘍の多くは甲状腺癌で、中齢から高齢で発症し、好発犬種はボクサーやビーグル、ゴールデンレトリバーとされています。

この症例は、飼い主様が体を触っていたところ、喉の脇にしこりがあるのに気づき、来院されました。
他に大きな症状などはありませんでしたが、犬種がビーグルで、しこりがある場所が甲状腺のある場所だったので、しこりを外科的に切除し、組織検査を行うことになりました。
主に、甲状腺癌の場合、物理的な圧迫や周囲への腫瘍の浸潤による呼吸困難や嚥下障害を主訴に来院されることが多いとされています。

治療としては、可動性があり、周囲への浸潤がなく、転移のみられない腫瘍は外科的な切除が第一選択になります。
また、手術や麻酔のリスクとなる甲状腺機能の異常や、それにともなう問題は内科的治療でコントロールしておく必要があります。
この症例は、外科的に切除を行い、組織検査で甲状腺濾胞腺癌と診断され、現在経過は良好です。

肛門周囲腺癌

肛門周囲腺癌は肛門の周りに存在する分泌腺が腫瘍化したもので、主に肛門周囲や尻尾の付け根に出来ることが多い腫瘍です。
男性ホルモンに関係している腫瘍なので未去勢の老犬に多く見られ、去勢した犬やメスではあまり発生しません。
肛門周囲に発生するので外科的に摘出する際、肛門の排便機能を維持して摘出するのは大変難しい手術になります。
この症例では腫瘍が破裂し出血などを生じ、生活にも支障をきたす状態であったため摘出手術をしています。
手術後の排便機能も問題なく、腫瘍と接していた尻尾も温存し摘出できました。
現在術後の経過は良好です。

GIST

消化管間質細胞腫瘍gastrointestinal stromal cell tumor(GIST)は胃や腸など消化管の壁の筋肉層に発生する腫瘍です。犬では最近になって分類された腫瘍でまだ報告数が少ない症例になります。

一般にGISTは転移しにくい腫瘍といわれ完全に摘出できれば完治が期待できますが、発見が遅くなり巨大化して腫瘍表面が割れてしまうと、そこから腫瘍細胞が浸潤する可能性が高くなります。
この症例では直腸の背側に腫瘍ができ、排便が困難になったので摘出手術を行いました。

口腔内腫瘍

この症例の口腔内腫瘍は極細胞性エプリスという腫瘍です。
歯根部から発生する歯原性腫瘍で、分類は良性腫瘍なのですが浸潤性が強くすぐに大きくなり、摘出したとしても再発率も高いので、局所的には悪性に近い扱いをされています。

患部の歯の抜歯と歯根部からの腫瘍の除去により治療することもありますが、 多くの症例で顎の骨に浸潤してしまい、その場合は第一選択として顎の骨の切除(顎切除)が必要になります。
その他口腔内腫瘍は悪性黒色腫や扁平上皮がんといった悪性のものも多く注意が必要です。

上皮小体腫瘍

副甲状腺の腺腫、癌、過形成を原因とする副甲状腺(上皮小体)ホルモンの過剰分泌が主な原因です。
随伴する症状として多飲多尿・嘔吐や下痢、便秘・痙攣・骨密度の低下(骨粗鬆症)・膀胱結石・高カルシウム血症などが見られます。

進行すると腎不全や心・血管系への負担となるほか、骨粗鬆症より生じる骨折なども見られます。
第一選択は外科的摘出になります。
この症例は摘出手術により投薬も必要なく腫瘍も良性だったため完治へと至りました。

神経鞘腫

軟部組織の腫瘍で血管や神経細胞から発生します。
神経から発生するタイプは進行が遅くなかなか気づかれませんが、 坐骨神経などから脊髄へ向かって増殖・浸潤した場合、進行性の後肢麻痺や麻痺による歩行異常を呈するようになります。

診断にはCT/MRIを用いての画像診断と手術により摘出し病理検査を行う必要があります。
この症例は片側後肢麻痺を呈し、腫瘍が骨盤を乗り越え脊髄へ浸潤しつつあったため、反対側の麻痺への進行を防ぐために腫瘍の摘出と同時に片側骨盤切除+断脚術を実施しました。

副腎腫瘍

副腎腫瘍は、多飲多尿や脱毛など、ホルモン異常から精密検査を受けて発見される場合が多いとされています。
およそ半数は悪性で転移を、良性でもホルモン濃度異常により諸症状や併発疾患も多いとされています。

内科治療を行う事もありますが、根治的には手術が第一選択となります。
手術は副腎という臓器が血管に隣接している関係から非常に難易度が高く、手術前にはCTを実施し場所と術式を決定する必要があります。

膵臓腫瘍(インスリノーマ)

インスリノーマは、インスリン分泌性β細胞腫瘍であり、犬に稀にみられ、猫では極めて稀な腫瘍です。
人のインスリノーマの約90%は良性ですが、犬ではそのほとんどが悪性(がん)です。

症状は低血糖によるものと代償性カテコールアミンの放出によるものがあり、痙攣発作、虚弱、運動失調、振戦、精神鈍麻などの神経症状が主体となります。最も多い転移部位は、局所リンパ節と肝臓であり、手術時に約50%で既に転移が認められます。
外科手術が第一選択となるので手術方針の決定と転移の有無を調べるためCT検査を実施します。

骨肉腫

骨肉腫は代表的な骨の悪性腫瘍です。
患部の痛みにより歩行異常が、時には病的骨折も生じその痛みはだんだんと激しい痛みに変わっていきます。

進行すると腫瘍の増大に伴い、肺や他の骨に転移し生命を脅かします。
治療は抗ガン剤・外科治療(部分切除もしくは断脚術)ですが、 痛みから解放する目的で断脚術を選択する場合もあります。

この症例は診断時明らかな転移巣が見つからなかった為、断脚術を実施しその後、抗ガン剤療法+新薬治療を現在まで行っております。

悪性黒色腫

ミニチュア・ダックスフントの左下顎の歯肉に発生した悪性黒色腫の症例です。
悪性黒色腫はがんの中でも進行の早いがんであり口腔内に発生した場合、腫瘍が大きくなるにつれて餌が食べづらくなったり、悪臭が発生したりする為、生活の質も下がります。

治療方法には放射線療法や、化学療法なども挙げられますが、この症例ではCT検査で転移が見つからなかった為、完治を目指して左下顎の部分切除術を行いました。


左 CT画像:腫瘍発生部位で骨吸収所見が得られています。
中央 手術前:緑矢印の部位に腫瘍があります。
右 手術後:手術前と比べてほとんど外貌に変化は見られませんでした。



左 摘出部位:緑矢印の部位に腫瘍があります。
中央・右 レントゲン画像:赤矢印は下顎の切断線です。